心を楽にするために振り返る子育て

疾病利得(しっぺいりとく)

一般的には、この言葉は次のような意味で使われることが多いと思います。

本人は意識していないが、病気や症状によって得ているものがある。逆に言うと、病気や症状などを生じさせて何かを得ようとしている。

こんな説明を読むと、『疾病利得』という言葉には、「ずるい」とか「卑怯」とかいう印象がまとわり付いているような気がしています。

しかし、本人にとっては、自分が本当にその症状や病気に困っているわけですから、そこに疾病利得なんて言葉を引き合いに出されると、そんな言葉を受け入れられなくて腹が立つことはあっても、解決へ向けてのヒントになることはほとんどありません。

逆に、自分の困っていることを『疾病利得』と結論付けられてしまい、その先をどのように考えたら良いのか分からなくなって、行き詰ったような苦しい思いにさせられることの方が多いところがあります。

そこで、行き詰らず、それを解決のヒントにするためにどのように考えれば良いのかを説明します。

自分を守ってくれている

疾病利得 = 何かから自分を守ってくれるもの

そう考えると、少し、考えやすくなります。

いったい、何から、何を、守ってくれているのだろう?

それぞれには個別の事情があるので、全ての疾病利得に対してあてはまるような的確な説明はここではできませんが、考え方の参考にして頂ければと、一つの例で説明します。

【例】 あがり症

もし、あがらなかったら、どういうことができてしまうと思いますか?

意識では、「あがらなかったらそれができるのに、あがってしまうからできない」と思っていることが多いのですが、本当のところは違うのです。

仮に、それができるようになると困ることはありませんか?

たぶん、「失敗するのではなだろうか・・・」とか、「失敗するのが嫌だ」というような気持ちが浮かび上がってくるだろうと思います。 つまり、このとき、

あがり症でいることで、あがるような状況を避ければ、あがり症に結び付けていることをしたとしたら陥るかもしれない失敗を回避できる

と言うこともできます。 そして、その解決策として、「じゃぁ、失敗を恐れないような強い心になればいいんだ」と考えるかもしれませんし、実際、そのような方向で取り組んでいる人は多いような気がします。

しかし、それは、本当の解決の方向は、ちょっと違います。

それを明確にするために、何を避けているのかということを、もうちょっと正確に表現してみます。

失敗した時に感じる『あの嫌な気持ち』を回避しようとしている

つまり、回避しようとしているのは、自分自身の気持ちだということです。

あがり症を問題視していると、何かをやって失敗したとしても、「あがり症だから失敗しても仕方ないんだ」とか「悪いのはあがり症で、自分は悪くない」とか自分自身に言い聞かせれば、感じてしまった『あの嫌な気持ち』を自分ひとりで少しは和らげることができたりもします。

気持ちを大丈夫にする方法を知らなかったの?!

なぜ、失敗するのが嫌なの?

その答えとしての心の叫びは次のような感じだろうと思います。

もし失敗したら、また『あの嫌な気持ち』を感じてしまい、そのつらさにしばらくの間一人っきりで耐えないといけないという状況に陥ってしまう。 でも、あんなに一人っきりで耐える苦しさを感じるのはもう嫌だ!

そこにあるのは、失敗を恐れる弱い心があるわけではありません。

そこには、失敗が許されなかった過去の事情があるだけです。

もっと正確に言うと

  • 失敗して苦しい気持ちになったときに、身近な人に気持ちを大丈夫にしてもらえなかった

という経験から来るイメージがあるだけなのです。

そのイメージのもとになった自分を取り巻く過去の事情を理解し、『気持ちが大丈夫になる道筋』を正しくイメージできるようになれば、きっと、そんな悩みから解放されるのです。

補足

たとえ、パニック障害のような理解不能な症状でも、同じように考えれば、きっと、その本当の原因を理解することにつながると思います。

(私がパニック障害を経験した実感として、何が起こっているのか?何でそうなっているのか?がサッパリ分からず苦しんだので、こんな表現になりました。)

【参考】

まとめ

つらい気持ちを一人きりで我慢せずに、大丈夫にする方法はあります。

その道筋を正しくイメージできるようになれば、それを実践できるようになり、それを実践する事で、気持ちを大丈夫にする事はできるのです。

疾病利得は、そのやり方がわからないとき、自分の代わりに自分自身の気持ちを守ってくれているのです。

そして、自分に生じた嫌な気持ちを、自分自身がちゃんと大丈夫にしてあげられるようになれば、これまで代わりに守ってくれていた疾病利得は、安心して、あなたから離れることができるようになるのです。

そんな感じです。

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