共生関係
説明
もともとのTA(交流分析)の用語としての説明とは少し違うのですが、「感情・感覚 ==> 思考 ==> 行動」という一連の流れが、個人の中で完結できなくなってしまった状態です。
この中のいずれかを他者に奪われてしまう(ex.子供の悩みを親が解決してしまう。)と、一連のことについて自分ひとりでは責任を取ることが出来ない状態になってしまいます。
その結果、次のような漠然とした感覚を身につけてしまう場合があります。
- 未達成感
- させられ感
- 自分の気持ちや感覚が分からない
もう一つの説明
人は、
- 自分が感じ
- 自分が考え
- 自分が行動する
という一連のステップを実現できる状態にあるとき、個として自立ているということができます。
逆に、そのステップのいずれかが、他人のそれにとって代わられる状態を、共生関係にあるといいます。
『共生関係』という言葉を使ってしまうと、それは良くない関係のように感じてしまいます。
しかし、人によって、次のようなことには違いがあります。
- できること・できないこと
- したいこと・したくないこと
- 得意なこと・苦手なこと
- 好きなこと・嫌いなこと
- 興味があること・興味がないこと
ですから、あることが得意な人は、それが苦手な人の代わりにそれをやったとしても何の問題もありません。
しばしば耳にすることがある「人は一人では生きていけない」とか「人はお互いに支え合うもの」といった言葉も、同じような意味のことを言っているのだと思います。
ですから、
ということは、まず、理解しておいて下さい。
では、『共生関係』という言葉を使って悪いと説明しているのは、どのようなことなのでしょうか?
次に、そのことについて考えてみます。
何が悪い
子供の頃の家庭環境に、子供や家族の感情・思考・行動を尊重する習慣があれば、子供や他人の感情・思考・行動を尊重する習慣を身につけていきます。
その習慣は、将来、共生関係を強いる人間関係に直面しても、それに巻き込まれずに距離を保つことにつながります。
ですから、共生関係は、主に、子供の頃の家庭の問題だと考えています。
そして、その関係の悪いところは、2つの切り口によって挙げられます。
1つ目は、
- 自分自身や他人の感情・思考・行動を尊重する習慣を、子供が身に着けることを阻害する
- 自分は尊重されないという感覚を、子供が身に付いてしまう
- 子供は、自分のことが尊重されないので、いつまでも幼児期と同じように、自己中心的な主張し続けなければならない
- しかし、いくら子供が、何かを主張しても、それは封じ込められ、親の主張が優先される
- その結果、子供は、他人を尊重できるようにもなれない
- 親に取り上げられてしまった部分は、子供がその能力を伸ばすためのトレーニングができず、成長できないままになってしまう
といったことにつながる可能性があるということです。
2つ目は、
親に取り上げられてしまった部分は、子供がその能力を伸ばすためのトレーニングができず、成長できないままになってしまう
ということです。
このトレーニングを阻害されて成長できていない部分を、大きくなった子供は、他人から「お前が悪い」と責められることになるのです。
更に、その張本人となった親さえも、責める側に回ることが多いのです。
何とも理不尽な話です。
子供の責任ではなく親の責任
『子供の自立心の無さが、共生関係を生みだす』というように、それが『子供の心の問題』によって生じると認識している人も多いようです。
「子供ができないから、親がやらざるを得ない」と主張する人も多いです。
しかし、その発端は、親の心理的な課題にあります。
- なぜ、子供がそれをできるようになれなかったのか?
そこにヒントがあります。 簡単なチェック項目としては、
- 親が子供の代わりに、子供の感情や感覚を感じ、それを主張していないか?
- 子供の葛藤に付き合えずに、親が子供の代わりに判断し結論を出していないか?
- 子供の行動を認められなかったり、待ちきれなかったりして、親が先走って、子供の代わりに行動していないか?
ということが挙げられます。 簡単に書くと、
- 親が、子供のことで、子供や子供を取り巻く人たちに対して、あれこれ口出しをすることが多い
- 親が、子供の社会の中に、誰から依頼されてもいないのに、自らがシャシャリ出ていくことが多い
- 子供の気持ちを理解しようとせず、親が自分の思いだけで行動してしまう
ということです。
もっと簡単に書くと、 ということになります。 親にそのように関わりの中では、子供が自分で考えて何かをしようとしても、親によってそれを妨げられることになります。
親の妨害行動によって、子供は、自分の感情・思考・行動のいずれかを否定されます。
この時子供は、感覚的には、『自分自身を否定された』というように感じてしまい、とてもつらい気持ちになるので、そんな気持ちを繰り返し感じなくても良いように、親が口出ししたり手出ししたりしそうなことには自ら対処しようとしなくなります。
その結果、子供の親が口出しする部分が成長する可能性は封じられるのです。
更に悪いことに、
となって残ってしまうのです。
【補足】
『指示待ち人間』なんて言葉がありますが、それはそんな習慣が残った状態です。
別に、本人にやる気が無いわけではなく、過去の習慣から「自ら考え行動しては拒否されてしまうから、具体的な指示が出るまで待っていた方が良い」と、無意識に反応してしまっているのです。
そして、そのような状態に陥っている人たちは、これまでの人生において、それをしないように細心の注意を払いながら生きてこなければならなかった(そういうトレーニングを積み重ねてきた)わけですから、社会人になったからといって、「突然、それをやれ」とか「それができないお前は劣っている」などと言われたら、訳が分からなくなるのは当然のことなのです。
そして、やっとの思いで「社会人にはそれが必要なことなんだ」と理解できたとしても、成人するまでの間丹念に繰り返されたトレーニングによって身につけた感覚は、とても大きな足かせとなってしまいます。
また、『過去の習慣による問題』とは理解できずに、自分自身が『指示待ち人間』というダメな存在として生まれてきたというように錯覚してしまうと、心の苦しさを抱え込んでしまうことになるのです。
親の接し方が問題だが、親だけの責任ではない
共生関係は、親だけの責任だと言っているのではありません。
親も子供の頃には、おそらく同じような経験があったはずです。
そして、親の親も、そのまた、親の親の親も・・・・。
そういう意味で、親だけの責任ではないと言っています。
では、これは、自分の子孫へも延々と受け継がせてしまうのかというと、そうではありません。
世代をまたぐその連鎖はストップする方法はあります。
詳しい説明は省略しますが、それは
ということです。
そのように親の意識が変わると、これまで『自分の人生を子供にやり直させるがごとくに行ってきた口出し』が減って、子供の気持ちを尊重できるようになってきます。
気持ちを尊重された子供は、親から安心と勇気をもらいます。
そして、親が子供のことをあれこれ心配しなくても、子供は勝手に幸せになる能力を身につけていくのです。
【親の立場の人へ】
- あなたは、子供に自分の夢を託そうとしていませんか?
- あなたは、子供に自分の失敗をやり直させようとしていませんか?
- あなたは、自分の心を自分の力で満たそうとすることを諦めてしまっていませんか?
- あなたが自分の過去に対する執着を手放して、今の自分にしか手に入れられない今の自分にとっての夢や望みがある
自分の夢は、自分の夢です。
ですから、自分が実現できなかった親自身の夢を、自分の代わりに子供が夢をかなえたところで、自分が夢を叶えたことにはなりません。
また、あなたの要求を、子供が無意識に自分の夢として受け入れてしまえば、子供の純粋な夢は消滅してしまいます。
更に、子供に託そうとするのは、今のあなたの夢ではなく、昔のあなたの夢です。
もっと言うと、それはあなたの夢ではなく、あなたの悔いです。
あなたが生きているのは今です。
今のあなたの夢は何ですか?
それは、子供の成長とは無関係なところにあるはずです。
もし、それが分からないとしたら、 ということと、一度、真剣に向き合ってみる必要があります。
- 自分の過去への執着を手放し
- たった今の自分にとっての夢や希望に気付き
- それを手に入れるための具体的な方法を考え
- やがて、実際にそれを手に入れる
そんなことを実現するために、心理カウンセリングを活用することができます。