22 会話の中の「感情の二重構造」
心理カウンセリングで、日常生活における人間関係などを相談するときは、その話題の中に登場する相談者の感情に焦点が当てられます。
ですから、相談者は、話題の場面での自分の感情だけに意識が向かいがちになります。
しかし、実際は、心理カウンセラーとやりとりしている自分にも感情は生じています。
心理カウンセリングに限らず、日常生活の中で、誰かに自分の経験などを話すときにも、「話題の場面での自分の感情」と「それを話す相手との間で生じる感情」という「感情の二重構造」があります。
心理カウンセリングでは、相談者は「話題の場面での自分」を理解することに意識が集中するので、「心理カウンセラーとの間で生じた感情」は話題の対象外としてしまいがちです。
また、人間関係で悩みがちな人は「その場で生じた感情は、その場でのやりとりの対象外にする」という傾向があります。
これらのことを理解し、自分に関わる感情の全てを、心理カウンセリングの場できちんと取り扱おうとすることが大切です。
そうしなければ、せっかく気持ちをスッキリさせるために心理カウンセリングを受けたのに、心理カウンセリングの場で生じた感情を蓄積させて苦しくなってしまいます。
「心理カウンセリングをやめたい」と思うようになったり、心理カウンセリングでの感情に対処するために、別の心理カウンセラーが必要になったりしてしまいます。
相手によって生じた感情は、そのときに、その相手との関係の中で解決することが理想です。
ただ、このときに注意しなければならないことがあります。
「ため込んでしまった感情は、相手にぶつけるのが当然だ」と考えるのは誤りだということです。
なぜなら、感情的になるのは、相手の責任というよりも、感情をため込んでしまいやすい自分自身の傾向が関係していることがほとんどだからです。
もし、日常生活で感情的になってしまったら、第三者的な人に話を聞いてもらい、まず、心を穏やかな状態へと回復させることが大切です。
その後、相手に伝える必要のある気持ちが残れば、それは伝えれば良いと思います。
第三者として心理カウンセラーを活用することもできます。
心理カウンセリング中に、心理カウンセラーに対して感情的になってしまっても、トレーニングを積んだ心理カウンセラーならうまく対処してくれるはずです。
ただ、心理カウンセラーも人間ですから、酷いことを言われれば、一般の人と同様に心は傷つきます。
ですから、自分が相談者、相手が心理カウンセラーという関係にあるからといって、何を言っても構わないということではないと理解しておくことは大切です。