18 心を支えられる体験
心理カウンセラーが心の苦しさを解消してくれると思っているとしたらそれは違います。
前にも書きましたが、心理カウンセリングの主体は、心理カウンセラーではなく、あくまでも相談者です。また、日常生活の中で、課題を解決するため実際に行動するのも相談者です。
心理カウンセラーは心をサポートしてくれる存在ですが、現実的な介入をすることはありません。
しかし、心の苦しさを抱える人にとっては、未体験で未知なことが、「心を支えてもらいながら、現実の場面にある課題に取り組む」という構図なのです。
例えば、小さな子供がオモチャをなくして泣いているところを想像してみて下さい。
子供を放置しておけば、いつまでも泣いたままで、オモチャを探そうとはしません。
ところが、次のような対処をしていると、子供は落ち着きを取り戻して、やがて自分でオモチャを探し始めます。
○「どこを探したの?そうか、そこを探しても見つからないんだね」とか「最後に使ったのはいつ?そうか、その後で、なくなったんだね」などと色々と尋ねてあげる
○子供が言うことに「そうか、それは困ったね」とか「そうか、それは不思議だね」などと応答する
○子供の感情が高ぶったときには抱きしめる
更に、探している子供を一人きりにしないように付いて行って、前述したような声掛けをしながら一緒に居てあげると、子供は自分で探しものを続けることができます。
再び泣いてしまったら、「見つからなくて悲しいね」とか「大事にしていたのにね」といってしばらく抱きしめてあげると、落ち着きを取り戻し、また自分で探し始めます。
親や大人が、子供に代わって行動しなくても、一緒にいて心を支えてあげるだけで、子供は主体的に行動するのです。
これと同じように、心理カウンセリングを通して、心をサポートしてもらうことによって得られる安心感が、日常生活での相談者の主体性を取り戻し、課題の解決へと導いてくれるのです。