第3部 「心の回復」を理解するための基礎知識
心の苦しさの心理的な原因を、突き詰めていくと、次の3つにたどり着きます。
(1)コミュニケーション不全の人間関係を基準に組み立てられた世界観
(2)その世界観の中で身につけた行動や反応
(3)社会に広まってしまった歪んだ解釈や価値観
ここで気付いて頂きたいのは、(1)~(3)のいずれにも、「心に問題がある」という結論は含まれていないということです。
この3つの原因を改めて眺めてみて、心理カウンセラーとして活動する前に、ボランティアの相談員になるための研修を受けていたときのことを思い出しました。
研修の中で、講師が「心が苦しいと感じるのは、心が健康な証拠です」と言ったことがありました。
当時の私は、その言葉を「相談相手と接するときの心構え」として漠然と受けとめていました。
その後、心理カウンセラーとして活動したり、色々なことを考えたりしてたどり着いた結論は、その講師が教えてくれた言葉に沿っていました。
(1)~(3)のいずれも、心が病気になる原因ではなく、健康な心を苦しめるものの正体です。
つまり、「心が苦しいと感じるのは、心が健康な証拠です」という言葉は、何の解釈もせずに文字通りに受け入れれば良かったのです。
(1)~(3)の中で、自分で解決できるのは、(1)、(2)です。この2つを修正すれば、自分らしい感覚・自分らしい思考・自分らしい行動を取り戻せます。
(3)は社会的な変化が必要となるので、社会的な意識改革のようなものが起こらなければ変化しないように感じてしまいますが、(1)、(2)について理解する人が増えれば、次第に解消されていくと考えています。
第3部では、自分で解決できる(1)、(2)について詳しく説明します。