心を楽にするために振り返る子育て

04-02.「自分の感情」と「他人の感情」の混乱

前回からの続きです。

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【前回のおさらい】

親が子供に感情的に接してばかりいると、次のような心配が生じます。

  • 子供は、自分の感情と他人の感情の区別がわからなくなる
  • 将来、人の顔色を伺ってばかりいるようになる可能性がある

感情というものは、元来、その感情を抱いた人の責任において感じるものです。

例えば、「君の考え方はおかしい」と言ったとき、「君の方がおかしい!」と怒る人もいれば、「どうして、そう思うの?」と冷静に応答してくる人もいることを考えれば、何となく理解して頂けると思います。

「なぜ、それに腹を立てたのか?」ということは、腹を立てた本人が考え、解決したければ解決すれば良いですし、特に問題がないと思えば、本人の責任で放置すれば良いことなのです。

ところが、次のようなことを習慣的に繰り返していると、感情の責任が曖昧になって、相手の感情を自分の責任だと感じたり、相手の感情を自分が解決しようとしたりするようになってしまいます。

  • 親の怒りを静めるために、子供が親の命令に従わせられる
  • 親の不安を解消するために、子供が自分の行動・態度・考え方を改めさせられる
  • 親に心配を掛けないようにさせられる
  • 怒ったり泣いたり落ち込んだりしている親をなだめるために、子供が自分の感情・考え・行動や態度などを詫びさせられる
  • 親が喜びそうなこと(過去に、親が喜んだようなこと)をするように仕向けられる

すると、『相手の感情を修復しなければならない』という超難題を抱え込まなくても良いように、相手の気持ちを敏感に察知しながら、相手が感情的にならないように自分をコントロールするようになるのです。

(相手がつまらなそうにしているときに、「自分がつまらないから、相手がつまらないと思っているんだ」と自分を責めてしまうのも一例です。)

これがTA(交流分析)でいうところの共生関係であり、共依存と呼ばれる状態につながる原因の本質です。

04-02-01.相手の感情をコントロールしようとする

親の感情を子供が解決することが習慣になってしまうと、成長して親から離れた後でも、次のような状態に陥りやすくなります。

  • 相手が何らかの感情を持ったとき、「自分がそれを解決してあげないといけない」という気持ちが必要以上に大きくなる

    例えば、DV(ドメスティック・バイオレンス)の一番の問題は、「相手が暴力をふるう」ということではなく、暴力を振るうと分かっている相手から離れることが出来ないというところにあります。
    これは、自分の感情と相手の感情の区別が付いていないために、「自分が変われば、相手は暴力を振るわなくなって、あの優しい人に戻ってくれるはずだ」というように考えてしまい、相手から離れる方法を考えるよりも、自分を変えようとするところに意識が集中してしまうためだと考えています。  
    また、何かに悩んでいる人と出会うと、放っておけなくなり、また、相手の責任や能力を無視して必要以上に世話をやくので、相手を依存させてしまいやすいところがあります。
     
  • 自分の感情の責任を相手に取らせようとする
    (自分の考えに従わせるために、自分の感情を道具として使う)


    「相手の感情を、相手の代わりに自分が解決する」という習慣があると、逆に、「自分の感情の責任も、他人が取ってくれる」と考えてしまいます。
    DVで相手を責めて暴力を振るってしまうのは、そんな感覚に近いと思います。
    また、自分が親からされたように、相手を思い通りに操作するための道具として、自分の感情を利用するようになります。
    しかし、普通の人(親の感情を解決させられてこなかった人)は、感情的に訴えかけてもなかなか自分の思い通りにコントロールすることはできません。
    そこで、自分の感情を、更に、エスカレートさせてしまうことになります。

    【余談】
    また、DVのところでも説明しましたが、普通の人は、感情的になって従わせようとする人からは自然に離れていきます。
    その結果、その方法で操作することのできる相手、つまり、同じような心の傾向を抱えた人と結びつきだけが残っていくことになります。

また、次のような状況も発生させてしまいます。

「相手が感情的になるのを防ぐ為に、自分をコントロールする」というのは、逆に、「自分を変化させることで、相手をコントロールして感情的にさせないようにしている」と理解することもできます。

そんなところから、相手の顔色を気にする人は、本人はそんなつもりはないのですが、無意識に相手をコントロールしようとする雰囲気を発してしまうところがあるのです。

04-02-02.家庭で有効だった手段も、外では使い物にならない

「相手の状態に合わせて、自分を変化させる」という方法は、もともとは、感情的になり易い自分の親に対してのみ有効だった手法です。

しかし、それが習慣になると、誰に対しても顔色をうかがってしまうところがあります。

自分は「相手のことを考えている」、「相手に気を使っている」と思っているのですが、そのやり取りに内在する「相手を操作しようとする雰囲気」によって、相手に

  • 操作されているような感覚
  • 支配しようとされているような感覚
  • 何かを要求されているような感覚

などを感じさせてしまいます。

また、次のようなことも引き起こす可能性があります。

  • 相手の中にない架空の気持ちを勝手にくみとるので、相手の本当の気持ちを理解していない
  • 相手は、架空の気持ちに繰り返し応答されるうちに、混乱して自分が何を考えていたのか分からなくなる
  • 架空の気持ちに反応してコロコロと主張を変えてしまうので、自分も相手も、自分の本当の気持ちが分からなくなる
【参考】 このようなとき、どのようなコミュニケーションになっているのかは、次のページで詳しく説明しています。

今回の締めくくりとして、共依存関係に陥らないためのポイントをいくつか挙げておきます。

【自他の感情を扱うポイント】
  • 相手の感情の責任は相手にあり、自分の感情の責任は自分にある
  • 相手から依頼されなければ、自分が主体的に動かなくても良い
  • 自分から依頼しなければ、相手は動いてくれない
  • 相手から依頼されても、断ることも出来るし、協力することもできる。また、協力するにしても自分のできる範囲内でやれば良い
  • 自分が依頼しても、断られることもあるし、協力してもらえる事もある。協力してもらえるときは、相手のできる範囲で協力してくれる

キリがいいので、今回は、このくらいにします。

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