恋愛感情
恋愛に関する夢のあるロマンチックな説明は数多くなされていると思いますので、ここでは、現実的な夢の無い話に徹します。
人間の性質
一般的に、人は、未知な部分を未知なままに放置しておくことが苦手な生き物です。
一連の出来事の断片と遭遇した時なども、なかなかそれをそれだけのこととして放置することはできません。
例えば、次のような場合、どんな気持ちになるか想像してみて下さい。
- 電車に乗った時、満員電車なのにある区画の座席だけ誰も座っていなかった
- スーパーの通路の真ん中に、ポテトチップスが落ちているのを見かけた
- 道を歩いていると、前から歩いてきた見知らぬ素敵な異性が、あなたの方を見て笑っていた
- 道を歩いていると、前から歩いてきた汚らしい見知らぬ中年男性が、あなたの方を見て笑っていた
どうですか?
たぶん、その状況に相応しいと思われる原因や理由を想像するのではないでしょうか?
3と4なんて、大して状況は変わらないのに、想像した理由は随分違ったのではないかと思います。
人は、このように、直面した断片的を、
- 一連の流れの中の部分だと理解しようとし
- 逆に、その一部の事実から、つじつまの合う全体を創り出し、未知の部分が無い形を創り出そうとする
といった性質があるのです。
恋愛って?
恋愛感情は、ざっと考えると次の3種類に分類されると考えています。
(真剣に考えれば、もっと、あるのかもしれませんが、今回はこのくらいに留めておきます)
- 一目ぼれ的な恋愛感情
- 離れられない理由として創り出す恋愛感情
- お互い(或いは、相手)を良く知ることで生じる恋愛感情
3は、特にトラブルにつながることはないと推測されますので、今回は、1と2について考えます。
(3については、機会があれば、別に考えてみたいと思っています)
ここに、動物の本能である性的な刺激(オスとメスを結びつけ子孫を残す為の働き)が絶妙に影響し、あの恋愛感情というものを構成しています、
複雑になりそうなので、今回は性的な刺激に関しては除外して説明しています。
一目ぼれ的な恋愛感情
『一目ぼれ』というと、言葉からも分かると思うのですが、相手のことは殆ど分かりません。
ちょっとしたやり取りはあるかもしれませんが、そんな些細なやりとりが、相手の未知な部分の全てを保証することには到底つながらないということは、客観的には理解できると思います。
しかし、一目ぼれという状態に陥ると、些細なことによって相手の未知な部分の全てが保証されているかのような錯覚に陥り、その後の、相手に対する想像力の方向性を決めてしまいまうのです。
一目ぼれのときは、
ということになります。
現実からは少し距離のある子供時代に、自分の将来を夢見てワクワクするような感覚に似ています。
ここで、一目ぼれ状態に陥った人にコミュニケーションの能力が低ければ、自分の本当の気持ちを伝えられず、自分の本当の気持ちに対する相手の反応も確かめる事はできません。
つまり、『自分の本当の気持ちを相手に伝えた場合の相手の反応』は未知であり続けることになります。
そこで活動が活発になるのが、前に説明した想像力なのです。
そして、その結果、どうなるのかというと、実際の相手を恋するというよりは、自分が創り出したイメージの中の相手に恋するという状況に陥ってしまうのです。
その結末は、たぶん、大体、次のようになることが多いような気がしています。
(結婚後にこの結末を迎えるのを避けるために、結婚前に、自分たちが本当の気持ちの部分のコミュニケーション行えているのかを再確認することは重要です。)
- 付き合うことで現実として知る部分の割合が増えるにしたがって、自分のイメージの中にあった相手とのギャップに耐えられなくなる
- 未知の部分が多い別の人が好きになる
- 本当の気持ちを相手に伝えられない苦しみに耐えられなくなる
- 他の異性に相談するうちに、そこで恋愛関係が生じる
もし、自分に一目ぼれしやすい傾向があったり、逆に、あまりお互いを良く知らない人から告白されたような場合は、このような気持ちになる傾向があるかもしれないということを、思い出して下さい。
離れられない理由として創り出す恋愛感情
「別れられないから、やっぱり私は相手のことが好きなんだ」と考える場合があります。
ここでは、あまり詳しく説明しませんが、そんな気持ちのときは、次のようなことを考えてみて下さい。
- 相手と一緒にいることで、つらい思いはしていないか?
- もし、別れるとしたら、どのような状況が整ったら、安心して別れることができるのか?
まとめ
『恋愛すること』と『恋愛小説を読むこと』とは、どちらも自分の空想の中で繰り広げられるという意味では、ほぼ同じです。
つらいこともありますが、それらを含めて感動もあり、色々な経験につながります。
ですから、大いに恋愛を経験すれば良いと思います。
しかし、『本当に自分が手に入れたいと思っていること』を手に入れるというステップに進むためには、『空想やイメージの世界ではなく、それを現実の世界で手に入れようとする』という切り替えが必ず必要になります。
そうしなければ、人生という現実の大半を『恋愛』という空想の世界に費やす事になってしまいます。
恋愛中に訪れる倦怠期という時期も、現実に向き合うための移行期間だと考えることができます。
結婚も、現実と向き合うきっかけになります。
結婚後、あの夢のような恋愛感情のかなりの部分がなくなっていくのは、普通のことなのです。
しかし、その代わりに、手に入るものがあります。
恋愛感情にばかり執着するのではなく、
- 『本当に手に入れたいもの』に意識を向け
- それに気づき
- それを自らが求めようとする
ということがとても大切です。
そうしなければ、結婚生活を、自分自身の責任において、『ただの我慢の日々』に変えてしまうことになるのです。