依存症
依存症というと、一般的には、「その状態に陥っている個人の『意思が弱さ』によって、依存症的な行動を止められない」といった感じに理解されていることが多いように思います。
しかし、依存症は、次のように表現できるのではないかと考えています。
- 心の苦しさの本質的な解決から意識をそらせて、代替の方法で解決しようとする試みの繰り返し
依存症について、次のように考えてみると、そこから抜け出すヒントをつかめるかも知れません。
1.快と不快について
人の感覚は、大きく快と不快の2つに分類できると考えられていると思います。
そして、依存症的行動は、快の感覚を得ることを目的とした行動を繰り返しているように観察されるので、現実や不快なことなどから逃げているように認識されることが多く、その行為を止められない意志の弱さが問題視され易いところがあります。
ここで、はじめの人間の感覚に対する認識を、次のように改めてみて下さい。
- 人の感覚は、大きく「不快」と「不快でない」の2つに分類できる
- 人は、自分に生じた不快が、解消される方向に変化するときに快を感じる
2.快を得られた行動
われわれは、普通、快の感覚とそれを得る為の行動が結び付けて認識しています。
これは、「過去の経験によって、快の感覚を得られた行動」が記憶されているに過ぎません。
ですから、未来においては、その行動によって同じような感覚を得られることも期待できますが、実は、それが得られる保証は一切ないのです。
3.不快を不快でない状態に戻す為の行動
不快を感じたときに、実際にそれを解消する為には、それが何によって生じているのかをもう少し細かく見ていく必要があります。
仮に、それが空腹という不快感なら何かを食べれば解消します。
寒さという不快感なら、暖かくなるように工夫すれば解消します。
このように不快の所在を的確に把握し、それを解消する為の方法を考え行動すれば、不快は消失し、一連の行動は終結します。
4.同じ行動を繰り返してしまう理由
本来は寒さを感じているのに、本人は空腹だと誤って認識してしまったとします。
普通、空腹と認識すれば、何かを食べることで解消すると考えます。
このとき仮に、スナック菓子をたくさん食べたとします。
しかし、これは寒さによる不快が原因なのですから、スナック菓子を食べても、もともと感じていた不快は解消しません。
ここで、本人に『不快の原因は別にあるのかもしれない』という視点があれば、そのうちに暖かくすることで不快から脱することができると思うのですが、空腹という認識から離れられないと、再び、食べるという行為を始めてしまうことになるのです。
5.行動の繰り返しから抜け出す為に
依存症的な行動の繰り返しから抜け出せないとき、次のような状態であることが多いと思います。
(恐らく、強迫神経症的行動も同じように考えられます。)
- 本来の不快の原因とは異なることを、原因と思い込んでしまっている
- 自分が本当に求めていることを理解する前に、容易に思い浮かぶ「快につながりそうだと思っている行動」を起こしてしまっている
そして、本来の不快の解消には結びつかない行動をする為、当然、もともと感じていた不快が解消することはありません。
このようにして、同じような行動の繰り返しに陥ってしまうのです。
詳細は省略しますが、その不快が心理的なものであれば、その事象に直接働きかける前に、まず、誰かに、優しくしてもらって下さい。
優しくしてもらおうとすることから逃げること、そして、優しくしてもらうことから逃げることが、依存症的行動の本質なのです。
補足
依存症の行動の全ては、心の苦しさに対処する代替の方法です。
その時は、何らかの別の刺激によって心の苦しさから解放されますが、後になって、そのことによる後悔や罪悪感をともなうような行為が選ばれやすいところがあります。
また、逆に、後悔や罪悪感を伴わせてしまえば、どんな行為でも依存症にしてしまうこともできるともいえるのです。
(罪悪感を感じなければ趣味、感じれば依存症)
※社会的に大義名分があるような行為を選ぶことが出来れば、その行動に没頭しているときは、心の苦しさを麻痺させることができると共に、罪悪感からも解放されるところがあります。
(仕事依存症、勉強依存症、教育依存症・・・)
ギャンブル依存症
パチンコ依存、スロット依存、競馬依存など、ギャンブルにはまり込み止められなくなる状態です。
勝つことにこだわり、大負けしないようにコントロールできているときは、恐らく依存とは言いません。
そして、信じにくいかもしれませんし、本人もそのようには意識していないと思いますが、依存症に陥っている時は、ギャンブルの目的は負けることにあるのです。
(しかも、後悔するほど大負けすることに・・・)
どうしてかというと、大負けした時に感じる嫌な気持ちが、もともと抱えていた原因の分からない心の苦しさと置き換わり、その結果、ギャンブルを止めることが出来れば、苦しい気持ちから開放されると考えることができるようになるからです。
(しかし、多くの場合、ギャンブルを止めることが出来ても、心の苦しさからは解放されません・・・。)
そして、ギャンブルを止めてしまえば、心の苦しさの原因がなくなってしまうので、ギャンブルをやめるわけにはいかなくなってしまいます。
この状態が、このギャンブル依存という状態なのです。
万引き依存症
※ギャンブル依存と同様の説明になります。
それと、事件的な扱いになると、色々な人が自分に関わってくれることになります。
それを求めての、行動という面もあるかもしれません。
どんなときに、誰に、どのように関わって欲しいのですか?
それが分かれば、万引きという行動は、必要なくなるかもしれません。
セックス依存症
※ギャンブル依存と同様の説明になります。
買い物依存症
※ギャンブル依存と同様の説明になります。
薬物依存症
中毒と依存の2つの問題に陥っている恐れがあります。
中毒は、医師の協力を仰ぐべきです。
そして、依存です。 中毒症状を治療しても、心の苦しさの正しい解消方法を身につけなければ、代替の対処方法に頼らなければならなくなります。
このとき、容易に自分が過去に行っていた方法が思い浮ぶので、深く考えなかったり、一人きりで乗り越えようと踏ん張ったりしていると、同じ薬物依存に陥り易いところがあるのです。
アルコール依存症
※薬物依存と同様の説明になります。
ニコチン依存症・タバコ依存症
※薬物依存と同様の説明になります。
恋愛依存
これは、依存症というよりはコンプレックスに近いところがあると思いますので、項目を分けて、恋愛依存で解説します。