価値観の形成(心を守る機能)
人が価値観(世界観)を身につけていく流れを、第一次反抗期、第二次反抗期、第三次反抗期の意味も踏まえながら説明します。
価値観の形成を考えるとき、「地球と太陽」の関係をイメージしながら考えると理解しやすいと思っています。
そこで、まず、太陽と地球の関係を説明します。
太陽がない場合
- このように太陽が無い場合は、地球の周りには大気だけがあるような感じになると思います。
- 太陽と同じ恒星は、遠くにあるので、地球には特に恩恵を与えない代わりに悪影響も及ぼしません。
- 星屑や小さな隕石のようなものが地球に飛来しても、大気が摩擦熱によって、それらが地表に到達する前に燃え尽きさせる為に、地表がダメージを受けることは、滅多にありません。
太陽がある場合
そこに太陽を置くと・・・
- 地球は太陽から吹き付ける太陽風を受けると、電離層を発生させます。
- 結果的に、この電離層は、太陽からの放射線から、地表の生命たちを守る働きをします。
- 太陽があることによって、地上の生命は、様々な恩恵を受けることが出来ます。
このようなイメージをもとに、次からは、人の心のことを考えていきます。
映画の紹介
私が、「人がこだわっている価値観なんて、この程度のものだったんだなぁ~」と目からウロコが外れ落ちたような感じがした映画を紹介しておきます。
価値観変化の流れ
太陽と地球の例から一旦離れて、『昔と今で、個人の価値観の形成にどのような違いがあるのか』大きな流れについて説明します。
子供の成長時期別の状態については、その後で説明しますので、今しばらく、お付き合い下さい。
人が、社会の中で、自分の人生を過ごす為に必要な「価値観を身につける」流れを、大雑把に表現すると次のようになります。
- 子供は、まず、親の価値観を鵜呑みにして、幼少期を過ごす
- 次に、知能や身体的能力の身につけると、自分用の価値観を再構築する
これらのことを踏まえて、以降の解説をご覧下さい。
それらの説明の後に、個人の価値観の変化の流れを、『太陽と地球の関係』をイメージしながら、『01.新生児期~幼児期』~『06.自立期』の6つに区切り順に説明し、最後に特殊なパターンを2つ説明します。
人が価値観を持つ意味も合わせてご理解頂けると思っています。
00. 個人の価値観変化の流れ
00-01. 個人の価値観変化の流れ(昔)
- 覚醒のきっかけになるのは、実社会からの刺激
- 親の価値観と義務教育社会の価値観が異なっても、それの終了時期は一致
- 進学という部分をとると、義務教育以降は、その人の人生への必要に応じて進学(学問を必要としない人は進学しない。)
- よって、高校や大学は実社会側に属することになる。
- 自分の価値観を刺激するのは、常に自分を覚醒させた社会からの刺激なので、社会に出てからも、自分の価値観を調整することは比較的容易
00-02. 個人の価値観変化の流れ(現代)
- 覚醒のきっかけになるのは、実社会からの刺激もあるが、教育社会からの刺激の比率が大きい
- 進学という部分をとると、その人の人生への必要性というよりは、そういう道があるから進まざるを得ないところがある。(学問は必要ないのに、学歴の為に進学する。)
- よって、高校や大学は、学問を求めない人たちにとっては、実社会からは切り離されることになる。
- 『仮の価値観2』は、仮の価値観であるにもかかわらず、実社会を生きるための価値観(『自分の人生の為の価値観』)と思い込んでいる
- 教育社会には、独特の価値観があるので、それを信じ込むと、切り替えが困難。(偏差値の高い大学を目標にしていると、大学に入ったとたん目標を見失うことがあるのもその例。学歴は人生の目標にはなりえない。「お金持ちになる」とか「出世する」などは、その変形版である場合も多い。))
- それをもって社会に出たとき、実社会の価値観が、別に存在していることに混乱する。
- 一旦、『自分の人生の為の価値観』として受け入れられた価値観を変更させるには、相当の労力(苦しみ)を要する。
- 実社会の価値観があることに気付かない場合は、『仮の価値観2』に基づいて生きることになり、「理解できない漠然とした生き難さ」のようなものを感じ続ける。
01. 新生児期
- 子供は、あらゆることに無防備な存在として、この世に生まれてくる
- 親は、大抵の場合、無条件に子供のする全てを受け入れることができる
親
- 大抵の場合、この時期は、子供には特に何も期待していない
- よって、自分の価値観に障るものはないので、価値観の輝きはあまり放たない(親の常識・習慣・価値観・世界観)
- 子供が泣けば、世話をしたりあやしたりして安心させる
子供
- 自分の不快などをそのまま表明する
- 大抵の場合、自分の不快を表明すれば、それが受け入れられる
02. 乳幼児期
- 子供は、自分の周りの危機を、まだ、あまり認識できないし、親の言っていることも、ほとんど理解できない
- 親は、自分の思い通りに動かない子供にストレスを感じ始める。でも、まだ、小さいからと受け入れることができることは多い
親
- 子供の成長とともに、親の子供の能力に対する期待が膨らみ、親の価値観の壁が表面化してくる
- すべき、出来るべき、出来るはず
- すべきではない、出来ないはず
- やがて、価値観という光線を放ち始める
- これに伴って、子供へのあやしが減ってくる
子供
- 理解しているような雰囲気をかもし出しつつも、理解できずに、親が放つ光線を素通りさせてしまう
- 多くの要求を全部覚えていられない
03. 幼児期(第一次反抗期)
親
- 言葉の発達によって、親は、子供が自分のいうことを全て理解しているように錯覚してしまい、、また、子供が自分(子供自身)の気持ちを正確に言葉で表現しているように錯覚してしまう
- 自分の期待(要求)を、子供が素通りさせることに耐えられなくなる
- 自分の思うとおりにさせたい傾向が強いと、親の光線には、太陽風のように多くの有害なものを含むようになる。
- 親の放つ光の強さは、親のこだわりに比例する
- 子供への圧力は自分の心へも圧力をかける。その圧力は、子供が生まれる前からも、自分自身に掛け続けてきた圧力。それには気付かずに、イライラの原因が子供であるように錯覚してしまう
- こだわりの強さに逆比例して、子供をあやす行動は、更に減少する
子供
- 子供はその攻撃を回避し心を守る為に、よろいを身につけていく。(簡単にいうと、「親の言う通りにする」ということ)
- 家族の価値観の圧力が強いため、家族以外の価値観が見えなくなる
- もともと価値観は流れ星のようなもの。それだけでは、心にダメージを与えることはない
- 親が価値観を主張しすぎると、「価値観=ダメージを与えるもの」という感覚を身につけていく。(親は、子供がダメージを与えるような行動を模索し、それでコントロールしようとする。また、逆に、褒めてコントロールしようとする。叱ろうが褒めようが、『仮の価値観』が作成されるという意味では、何の違いもない。)
- 怒るなど不快を活用して子供をコントロールしようとするときは、心を回復する機能を子供が働かせることができるようあやし役を別に立てておくことが重要。そうしないと、次第に、心を回復する機能は封印されていく。
- また、親の圧力が強すぎたり、心を回復する機能を活性化させずに、この時期を過ごしてしまうと、『仮の価値観』は厚みを増し、覚醒(自己への目覚め)のときに、その部分では、自分が生きている現実に合わせた価値観の調整が起こりにくくなる。
04. 児童期(安定期)
親
- 子供の「親を怒らせない行動」の学習が進むにつれて、親の放つ光は弱まっていく
- 子供を軽く刺激すると、言う通りになるので、あまり、強烈に主張しなくても済む
- 親が、一番楽な時期
- 自分は、「子供を無条件に愛している」と錯覚する
子供
- 仮の価値観の壁は、親の圧力を受け続けて、次第に厚くなっていく
- 親の反応が読めるため、あまり感情を逆なでするようなことはしない
- 親を怒らせない適切な対応は条件反射として身についているので、親のこだわりをあまり意識しなくても済む時期
- この厚くなった『仮の価値観』によってもたらされる仮の平穏の中で、自分の親がどの親よりも優しいと思う。自分の家庭を普通の家庭だと思う。どの家庭よりも恵まれているとさえ思うこともある。
- 『仮の価値観』が厚くなっている部分は、異なる価値観の圧力を受けると、それを素通りさせることが出来ずに価値観を跳ね返してしまう。すると、跳ね返したことによる反動によって、心はダメージを受ける。
- 相手の価値観に逆らう
- 相手の価値観を飲み込む
- 相手の価値観に反応しないようにこらえる
05. 思春期(第二次反抗期)
- 子供の『仮の価値観』が検証され、『自分の人生の為の価値観』へと再構築される
- この時期に、親が自分の価値観にこだわり子供の価値観を受け入れられない為、反抗されているように感じてしまう
親
- 第一次反抗期のときと同じように、自分の思い通りにさせようとして強烈な光線を発しはじめる。
- しかし、子供は成長し、考える力・行動する力を身につけているため、第一次反抗期と呼ばれている時期のように、親の思い通りには行動しなくなる。
- 親が自分の価値観にこだわると、子供が提示する別の価値観を受け入れられない
- この状態になると、親は「子供の方が反抗している」と考えるようになる
- 親が自分の価値観を手放せずにこだわってしまうと、再び、価値観を強く放出するようになる。(この傾向が強ければ強いほど、第三次反抗期への流れる可能性が高まる)
子供
- 自分で考える能力を身につける
- 自分の経験や知識により、自分なりの価値観を蓄える
- 自分と同様に、知能や能力を発達させて「自分の価値観を持ち始めた友達」からの価値観によっても刺激され始める
- その結果、親の価値観を客観的に検証できるようになり、異常な部分にも気付く
- 仮の価値観が崩壊し始め、価値観の再構築が始まる
- 社会からの価値観と親からの価値観の二重攻撃に合う
- 親と社会の価値観が異なる部分で混乱する
- 親と社会の価値観が一致しても、自分の価値観と異なる部分で混乱する
- これらの状況により、心が癒される場所がなくなりがちになる
06. 自立期
親
- 子供を尊重している親の場合は、成人よりも前の思春期の頃に、子供の価値観の独立を受け入れている
- 支配的な親でも、社会人になるというタイミングで、「成人した」「20歳を越えたから立派な大人になった」という社会通念に従って、子供を自分の支配下から解放する
子供
- 親元から物理的に離れ、見かけ上は、これまでの価値観の呪縛から解放される
- それまでの価値観をほぼ固定化させる。当然、外部(親や教育社会)から与えられた価値観も組み込まれている
- それらを含めて、自らの価値観として輝き始める
- この輝きが、周りだけでなく、自分に対してもダメージを与える
- その後の経験によって、価値観の微調整が行なわれる
- しかし、身に付いてしまった価値観の得方が強烈であればあるほど、価値観の調整は行なわれ難くなる(価値観の壁が厚くなっている)
- 価値観を受け流せば心は衝撃を受けず、跳ね返すとダメージを受けてしまう
07. 特殊パターン1
これまで説明した価値観形成の流れを、あるポイントを中心に考えると、次の2つに分類することが出来ます。
- 社会の価値観を完全に遮断されるような状況に置く(特殊パターン1)
- 社会の価値観を中心に据えるく(特殊パターン2)
恐らく、双方とも、第二次反抗期と呼ばれている状態を、親は経験することはないと考えています。
しかし、『社会の価値観を完全に遮断されるような状況に置く』という方は、第三次反抗期と呼ばれつつある状態につながり、『社会の価値観を中心に据える』の方は、「子供が自立したいと思ったときにはいつでも自立させてあげることができる」、そんな状態につながるのではないかと思います。
07-01. 特殊パターン1(洗脳期)
親
- 親や教育社会の強烈な価値観が、社会の価値観を遮断
子供
- 価値観が強制的に移植されてしまい(洗脳)、自らも同じように、家族以外の人や社会の価値観を跳ね返す壁(仮の価値観)を持ってしまう
- 自分の価値観が確立されていない為、価値観を強要される不快とは裏腹に、自分以外からの強い価値観が存在しないと不安定になる
- その結果、統制された集団に所属したくなったり、約束や規則という強烈な価値観の規制を、自らが作り出し、それを自分や他人に強要しようとしがちになる
07-02. 特殊パターン1(かく乱期(第三次反抗期))
親
- 「もう、大人なんだから自分で考えなさい」「お前の考えを尊重している」などと、社会通念に縛られることによって、突然、子供を自分の支配下から解き放つ
- 子供を自由にしている振りをして、子供が成人してもなお、支配を継続しようとする親もいる
- 子供の独立を認めることの出来ない親もいる
子供
- 社会人になるという名目で、親や教育社会の価値観を、突然外される
- 突然、これまでとは異なる価値観にさらされて目がくらむ(一種のカルチャーショック)
- 価値観は、『仮の価値観』のまま。現実社会を生きていくための価値観とは大きなギャップが生じている。(現実に対して無防備)
- 他人の価値観も強烈に降りかかってくる。(他人の価値観にも、教育社会や親と同様に、何かのこだわりに囚われたものがあり、強い刺激を放つ。)そして、価値観のギャップが原因で、心はダメージを受ける
- そんな中でも、自分のこれまでの囚われから解放されるきっかけを作ってくれる価値観もあり、それを受け入れれることができれば、自分を囚われから解放してくれる
- そのような中でも、親や社会から、一人前の人として認められず、自分を苦しめる強烈な価値観(親の価値観、教育社会の価値観、そして、社会の多くの誤った価値観)から解放されなければ、ひきこもらざるを得なくなるかもしれない・・・
08. 特殊パターン2 (理想的なパターン?)
※ このような形が、理想に近いのではないかと考えています。
親
- お互いの喜びを共に喜び、苦しみを互いに支えあう(相手の話をじっくり聴く)
- 教育社会や社会常識の側から極力距離を保とうとし、『家庭は心の癒しの場』というようなイメージを持っいる
- 教育社会などの特殊な社会からの価値観による洗脳から子供を守り、いつも、自分の人生の目標に目を向けさせるように注意を払う
- 親の経験や知識を、ただの情報として提供し、掟として強制しない
- 子供を成人・未成年などの区別をせず、一人の人間として接する
- 多少のしつけを行なうのは当然のことだが、親のこだわりが少ない
- 親は、子供ではなく、自分自身の心と向き合う
- 家庭の外で、子供が自分で学習する能力があることを信じる
- 子供が得てきた価値観も、親が尊重する
- すると、子供が反抗しているようには感じない
子供
- この繰り返しによって、常に、価値観は目の前の現実(死ぬまで自分が生きていく現実社会の価値観や環境)に応じて修正され続ける
- 心を回復する機能を活性化させておけば、価値観の壁を厚くしなくても済むし、大きな衝撃を受けても、苦しみの深みにはまり込まなくても済む
- あやし役を伴うことで、他の価値観を流れ星のように眺めることができる
2009/02/27 – 08:35