19 心理カウンセラーという存在
心理カウンセラーは心理の専門家ですが、お医者さんのように病気を診断して治療をする人ではありません。
また、心理的に完璧な存在ということでもありません。
みんなと同じ普通の人です。そんな普通の人でありながら、自分自身の心の課題とも向き合い、専門的な知識や心理療法的な技術を提供してくれる協力者が心理カウンセラーです。
心理カウンセラーは、約束した日時に、約束した時間だけは、ずっとそばに居てくれます。相談者の感覚や感情を大切にすることによって、感情の混乱を落ち着かせてくれ、また、感情が混乱している中で考えついた「誤った解決策」へのこだわりを解いて、本当の望みに気付くこと、そして、それを実現することを手伝ってくれます。
心理カウンセラーとの関わりは、相談者に「温かく見守ってもらっている」と感じさせてくれます。
そして、心理カウンセリングの中で「温かく見守ってもらっている」と感じられる経験を繰り返しているうちに、相談者は心理カウンセリングから離れたところでも、いつも温かく見守ってもらっているような安心感に包まれるようになっていきます。
心理カウンセラーは、相談者が何かにチャレンジすることによって、どのような結果になっても批判せずに温かい気持ちで見守ってくれる友人的な存在です。
孤独にチャレンジしたり、監視されながらチャレンジしたりするのと、温かい気持ちで見守られながらチャレンジするのとでは、心境が随分違うことは想像できると思います。
「いつも温かく見守られている」という安心感で心を包み込むことは、本来は親や大人の役割です。
子供の頃に、親や周りの大人からいつも見守られる体験(見張られる体験ではありません)を通して、心を安心感で包み込むことが理想です。
ですが、何らかの事情によって、子供の頃にそのような体験を十分にさせてもらえなかった人も数多くいます。
そのような相談者に、親に代わってそのような体験をさせてくれるのが、心理カウンセラーだということもできます。
親から与えてもらった安心感が本物で、心理カウンセラーから与えてもらった安心感は偽物だと感じてしまうことがあります。
「本当は親に安心させてもらいたかった」という気持ちに重点を置くと、そのような理由付けにもなるのですが、安心感の由来を考えずに、その感覚だけをとってみれば、どちらが本物だとか偽物だとかいう違いはなく、どちらも同じ安心感なのです。