02 家庭に対するイメージ
心の平穏を考えたとき、家庭は、家族の心を楽な状態に保ったり、家族の心をダメージから回復させたりするように機能する必要があります。
もともとは家庭以外の人間関係においても、心に対してそのような機能は働いていたのでしょうが、現代社会においては、核家族化や地域社会の崩壊などによって、その機能が正常に働かなくなってきています。
ですから、「自分たちの心は自分たちで守る」ということから始めるしかなく、そのためには、まず「家族の心は家族で守る」という形が、今の社会では、何よりも求められることなのです。
家庭が家族の心身の安心・安全を保障することによって、家族は緊張・警戒状態から解放され、外での活動によって受けたダメージから心身を回復させられるようになります。
自分の外での経験を家族に聞いてもらうだけで、新たな活動に必要な勇気や心のエネルギーが補充され、心身の疲労は回復し、心の健康が保たれるのです。
これは、家庭での次のような関わりによって実現できます。
■お互いの感覚を否定したり責めたりしない
■お互いの感情を否定したり責めたりしない
■お互いの思考を否定したり責めたりしない
■お互いの行動を否定したり責めたりしない
■お互いの「行動による結果」を否定したり責めたりしない
もう少し具体的に表すと、次のようになります。
○嬉しいとき、一緒に喜んでくれる人がいる
○つらくなったとき、寄り添って話を聞いてくれる人がいる
○何かにチャレンジしているとき、応援してくれる人がいる
○頑張ったけど失敗したとき、結果よりも頑張ったことを認めてくれる人がいる
○痛いところがあるとき、優しくさすってくれる人がいる
○寒いとき、毛布をかけてくれる人がいる
○暑くて眠れないとき、うちわで扇いでくれる人がいる
○のんびりしたい気分のとき、のんびりさせてくれる人がいる
○恐怖や不安を感じているとき、安心になるまで気持ちを聞いてくれる人がいる
○やる気が出ないときや疲れているときなどにゴロゴロしていても、それを承認してくれる人がいる
理想は、家庭の中に、「家族全員が、どんな気持ちのときにでも、居間に居たくなる」という雰囲気ができることです。
家族がお互いに、このように接することができるかどうかは、子供の頃の家庭での経験が大きく影響します。(親の場合は、今の家庭ではなく、自分が生まれ育った家庭の影響を受けることになります。)
家庭が子供にとっての安心な場所として機能していれば、子供の心に「安心な世界」という現実が築かれていきます。
「2-2 嘘と本当」で説明した原理によって、子供の心に築かれた「安心な世界」という現実は、世の中の安心な人や場所への橋渡しをしてくれます。
そして、安心な人間関係の中で多くの時間を過ごすことによって、自分自身も「他人に安心を与えられる人」として成長していきます。
家庭がそのように機能していないときは、その代役が必要です。
その代役になれる可能性があるのが、子供と接する機会のある全ての大人たちです。
学校の先生、たまたま触れ合う機会があった大人、近所の大人や年上のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちです。
しかし、代役が現れることがあまり期待できないのが現代の社会です。
もし、家庭が安心な場所ではなく、更に、その代役もいなければ、子供たちは、人間関係の中で傷ついた心を、人に癒やしてもらう練習ができずに、子供たちの心に「この世の中は安心できない世界である」という現実が築かれてしまいます。
その現実が、世の中の安心ではない場所への橋渡しをしてしまうので、子供たちは、そのような現実の中で生きていくことになります。
この説明の家庭という言葉の範囲を、人間関係と拡大して解釈すると、人の心を健全な状態に保つために、社会において大切なことは何なのかも想像できると思います。
そして、現代においては、社会の中で強がってばかりいなければならないのが大人です。
ですから、大人にとって、家庭が安全で安心できる場所であることは、子供の場合よりももっと重要だといえるのです。