第4部 心を回復させる心理カウンセリング活用法

「心が関係する様々な問題を解決しようとするとき、心理カウンセリングが有効である」という漠然とした雰囲気は、社会に広まってきています。
しかし、心が関わる問題や課題は、症状名や状態名などで分類されてはいますが、詳しく話を聞いていくと、現在の状況や、それに至った経緯など、どれ一つとして同じものはないと言えます。
ですから、「心理カウンセリングという手法は万能であるかのごとくに「心に抱えてしまった問題は、心理カウンセリングで解決できる」と言われてもなかなか信じられないと思います。
また、「心理カウンセラーは、状況分析・原因究明・解決策検討などの能力が高い人だから、心に抱えてしまったどんな問題でも解決できる」と思おうとしても、心理カウンセラーの全てがそのような万能の人物だとは思えません。
実際、心理カウンセラーもただの人間ですから、できることなどたかが知れています。
これが現実です。この現実を無視して、「心理カウンセラーが何でも解決してくれる」と思えば、「心理カウンセラーは知力・人格ともに優れている」と信じ込んで依存的になってしまうことになります。
「心理カウンセラーは、自分自身のことを知力・人格ともに優れていると錯覚している」と思えば、「心理カウンセラーは何様のつもりなんだ?」と拒否反応を起こしてしまうことになります。
仮に、全知全能の人格者がいて、相談したことの全ての答えを導き出せたとしても、「解決」は全知全能の人の中で起こるだけで、相談した人の中で起こるのではありません。
それが正しい答えだったとしても、それを聞いた相談者は、自分の問題が解決するどころか、答えをもらってもそのようにできないことに、逆に、苦しみを深めてしまうことさえあるのです。
つまり、課題を解決するための答えを与えてもらっても、自分にとっての本当の解決になるとは限らないのです。これはとても重要なポイントです。
では、心理カウンセリングは、心に抱えた問題の解決に有効ではないのかというと、そうではありません。
心理カウンセリングをうまく活用すれば、様々な課題の解決につながります。
それはなぜかというと、課題を解決するのは、心理カウンセラーではなく、それぞれの課題の専門家である相談者自身だからです。
多種多様な課題を持つそれぞれの相談者が、心理カウンセリングを活用しながら、それぞれの課題を解決していった結果、総論として「心理カウンセリングを活用すれば、心理的な様々な課題を解決できる」といえるようになるのです。
詳しくは本文で説明しますが、人は、もともと自分に降りかかるどんな課題でも、自分なりの解決をすることができます。
(この「自分なり」ということは重要なポイントです。)
しかし、それができない状態になっているから、自分が直面している課題を解決できなくなったり、心に苦しさを抱え込んだりすることになるのです。
心理カウンセリングの目的は、相談者が自分なりの解決を実現できる状態を取り戻せるように、相談者の心理的なパワーを十分に増幅させることだといえます。
排出できずに滞留させてしまっている感情は、心理的なパワーの増幅を妨げます。
そこで、心理的なパワーが効率的に増幅されるように、その妨げとなる感情を、泣いたりして排出させて取り除く作業も並行して行われます。
相談者に、心理的なパワーが十分に蓄積されれば、自分なりの目標を見つけ出し、自分なりに行動し、自分なりの解決を実現できるようになります。
これらの解決は、全てが、相談者の中で起こることです。
心理カウンセラーに解決が起こる必要は一切ありません。
心理カウンセリングの中で導き出される答えということでは、心理カウンセラーが導き出した答えと何ら違いはないのですが、心理カウンセラーだけに解決が起こり、相談者が取り残されて、更に苦しい状態になることもありません。
相談者が解決を見つけ出した時点で、それは、相談者にとっての本当の解決になるのです。
滞留させた感情の排出と心理的パワーの充足、これが心理カウンセリングの二本柱です。
そのような心理カウンセリングのメリットを活用するためのポイントを説明します。