03. 人間が群れを形成するための本能的な行動
人は、自分たちが人という特別な存在ではなく、サルの一種であり、安全を確保して安心するために群れる習性があることを知らなければなりません。
04-01. 人間にとって重要な本能的行動
人間が群れるための基本的な行動は次の2つです。
- 泣くこと (または、『泣く』ことと同じ意味を持つ行動(苦しい気持ちを言葉にして誰かに話す、誰かに助けを求める…など))
- 泣いている人を見たときの行動 (抱き上げる、攻撃を止める、背中をさする…など)
泣くという行動には、私たちの誰もが持つ『心を回復する機能』を活用して、心を安心で穏やかな状態に戻す働きがあります。
これは、他のところで何度も説明してきました。 この他に
という重要な意味があったのです。
この「泣く-許す」という行動の呼応が、人間が群れを作るための仕掛けです。
何らかの事情によって、この『泣く』という本能的な行動や、それに呼応する行動が引き起こされなくなることが、人の心の苦しみの始まりであり、社会の病理の始まりなのです。
04-02. 人間の行動
なぜ、本能的な行動が妨げられるようになるかを理解するために、人間の行動を次の4つに分けて説明します。
- 本能的な行動
- 自然な行動
- 学習された行動(条件反射的な行動)
- コントロールされた行動
1.本能的な行動
空腹になれば何か食べようとしたり、寒くなれば暖かくなるようにしようとしたりと、自分という生命を維持するための行動です。
詳細の説明は省略します。
2.自然な行動
その時々に生じるささやかな気持ちに沿って対処する自然な行動です。
例えば、お腹が空いたからサンドイッチを食べようとしたり、ご飯を食べたら食器を洗ったり、良い天気だと散歩に出かけたり、話したいと思ったら話したり・・・。
これらの行動は、本来は、それをしようとしても 他者から何の制限も受けることはないはずの行動です。
このような行動が、他者や環境的要因によって制限され続けると、次の学習された行動やコントロールされた行動が優先されるようになります。
3.学習された行動(条件反射的な行動)
環境に適応していくために学習された行動ですから、環境が変わらなければ、私たちには何の不都合を起こすことはありません。
自分が属する環境において、思考を省略して効率的に最も妥当な行動を起こすことを実現してくれます。
しかし、環境が、これまでとは全く違うものに変わってしまったとき、それ以前の環境にだけ有効な行動を、学習して身に着けている量が多ければ多いほど、以前とは異なった環境に適応する難易度は高くなっていくことになります。
※価値観が不連続に大きく変化する区切り(家庭、学校社会、経済社会)によって生じる問題については、『07-02. 人間の活動の原点は人間の活動の原点は安心安全だったはずなのに・・・』の説明も参考にして下さい。
4.コントロールされた行動
コントロールされた行動は、人間独特の行動です。
何らかの理由で、社会には、さまざまの「○○のときは××のようにすべきだ」という雰囲気で満ち溢れています。
【例】
- 男らしく
- 女らしく
- 出来る人はこうするはずだ
- 強い心の人はこうするはずだ
- こんなことをしたら弱い人だと思われる
- 優しい人はこうするはずだ
- こんなことをするのは思いやりがない
- このような時にこうするのが、人の自然な行動だ
このような思考によって、自分に生じる行動(本能的行動や自然な行動や学習された行動)を抑えてまで、自分の行動を、社会の雰囲気に合わせようとコントロールしてしまうところがあります。
これらの行動のうち、学習された行動とコントロールされた行動が、本能的な行動・自然な行動を妨げてしまいます。
- 1、2 と 3 のギャップ
- 3 と 4 のギャップ
- 1,2 と 4 のギャップ
04-03. 群れる動物としての成長
人間がこの世に生れて、『自己防衛機能』を委ねる最初の相手は、家庭の中の親(特に、母親)です。
小さな子供が、最初に『自己防衛機能』を他者に委ねるときにする本能的な行動は泣くことです。
その行動は成長に伴って、言葉で表現するように形を変えていきますが、基本的な意味合いは変わりません。
- 泣く : 抱き上げる
- 抱っこしてと言う : 抱き上げらる
- 心の底から謝まる : 許す
- 助けを求める : 助けられる
家庭の中で、それらの行動の呼応を繰り返し体験することが、いつでも腹を上に向けて寝転がることが出来る人、つまりは、群れの中に受け入れられる人へと成長していく種(タネ)になると考えます。
ところが、
- 泣く : 責める・放置する
- 抱っこしてと言う : 責める・放置する
- 心の底から謝まる : 責める・許さない
- 助けを求める : 助けない・無視する・責める
といった経験を繰り返すと、『自己防衛機能』を他者に委ねることはできずに、自分自身の中にその機能を抱え続けなければならなくなります。
これは、群れない動物として、子供を育てているのと同じです。
これらの行動の呼応を繰り返し体験することで、決して腹を上に向けて寝転がらない人、つまりは、群れに受け入れられることのない人へと成長していくのだと考えます。
一匹狼ばかりが集まっても、外見的には群れのように見えます。
しかし、それは、群衆のようなものであって、互いを守る為に形成される群れとは全く異質なものです。
そんな集団を群れと勘違いして執着してしまうと、人間関係のトラブルを引き起こしやすいところがあります。