07 「記憶から創造される現実」の中の感覚の性質
例えば、町を歩いていて、ある家の前を通りかかると、突然どこからともなくカラスが襲い掛かってきて、頭をひどくつつかれるところを想像してみて下さい。
それが毎日繰り返されると、その家に近づくと、頭上に嫌な感じがするようになります。
その感覚は、自分の身の安全を守るために生じる感覚です。
その感覚に反応することで、いつカラスが襲い掛かってきても対処できるように身構えたり、突然の襲撃に大きなショックを受けないように心身の緊張状態を作り出したりできます。
頭上に生じる嫌な感覚は、カラスの存在が確認できていない段階では知覚現実とは無関係のものです。
ですが、それを感じている人は、記憶投影現実の中で、カラスに襲われる生々しい体験をしているのです。
7-1 感覚と距離や方向
カラスの例で説明を続けます。
カラスの存在が確認できていないうちから生じるような感覚は、普通、その出来事が起こりそうな場所から離れていると感じませんが、近づくに連れて感覚が強まってくるところがあります。
また、その場所に来ても足下に感じることはなく、ほとんどの場合、いつもカラスが襲い掛かってくる方向や襲いかかられる部分に感じます。
このようなことから、カラスに襲い掛かられそうな感覚は、方向や体の部分などの3次元的な情報を持った感覚として記憶され、その場所との距離によって記憶投影現実の中に3次元的な感覚として再現されると解釈できます。
7-2 感覚と時間
タイムライン(※1)という考え方があります。
この考え方では、地面に、過去や現在や未来にあたる場所を設定して、時刻を場所、時間を空間的な距離に置き換えます。
そして、過去の場所から未来の場所へと続く線上を歩いて移動すると、実際に時間が経過するように心理状態も変化するというものです。
(過去に向かって歩けば、時間を巻き戻すこともできます。)
例えば、未来の場所に苦手なイベントを設定し、現在の場所から未来の場所へ向かって歩いて行くと、次第にドキドキしてきたり、緊張状態が強くなったりするような心理的身体的な変化が生じます。
この心理状態の変化は、記憶投影現実の中で、「その時々に自分に生じることが予定されている感覚が、予定されている時期に差し掛かると再現される」と解釈することもできます。
※1 タイムラインはNLPの考え方です。NLPは、リチャード・バンドラー、ジョン・グリンダーによって開発された技法です。
7-3 まとめ
ある状況に遭遇したとき、そのときに初めて生じる感覚は、目の前の状況に対して、素直に反応して生じる感覚です。
しかし、目の前では、まだ何も起こっていないのに、その状況を考えただけで生じてしまう感覚は、記憶投影現実の中で生じる感覚です。
そのような感覚は、記憶投影現実に組み込まれている「感覚を生じさせるもとになる記憶」(以降、感覚の素(もと)と記述)が発する刺激を受けて感じていたり、感覚の素に結びついた感覚が再現されたりしていると解釈できます。