心を楽にするために振り返る子育て

自殺対策

もし、商売をしていて、死に筋商品の不良在庫を大量に抱えてしまって、それを処分したいとき、どのような文言でアピールするでしょうか?

恐らく、死に筋商品不良在庫一掃セールとはしないはずです。

例えば、商品入れ替えセールとか在庫一掃セールとか新旧商品交代セールとかいうように、消費者に対して悪い印象をあまり与えず、そして、嘘をつくこともなく、うまく購買意欲を駆り立たせるような言葉を真剣に考えるのではないでしょうか?

そして、その考え抜いたキャッチフレーズを使用して広告やPOPなどで消費者にアピールするだろうと思います。

つまり、商売人が期待する行動を、消費者に引き起こす効果が高いと思われる言葉を使ってアピールするということです。

ここからが本題になります。 最近、自殺対策自殺防止という言葉をよく耳にするようになりました。

10年以上も自殺者が3万人を超え続ける現在、これらの言葉は「当たり前のこと」「必要なこと」として受け入れられています。

しかし、冒頭の説明と照らし合わせると、「自殺対策」「自殺防止」といった言葉を使って社会に訴えかけることには違和感を感じます。

これらの言葉が期待していることは、社会問題の解決という立場で「自殺しない」「自殺させない」ということになるのかもしれません。

しかし、それは追い詰められてそうせざるを得なくなってしまった人にとっては、何の救いも感じることのできない言葉だと思うのです。

「生きろ!」「(本当は)生きたい!」という気持ちに訴えかける力が弱いと感じるのです。

ですから、そんな気持ちを伝えたり、呼び起こしたりすることができるネーミングに変える方が良いと思います。

例えばですが、

  • 心の苦しさを楽にする手段の周知徹底対策
  • 一人で抱え込み追い詰められることを防止する対策

とかいうようなネーミングに・・・。

(センスのある人が真剣に考えれば、もっと良い名称を付けられると思います。)

そうすると、「心を楽にする方法ってあるんだな・・・」、「一人で抱え込むから追い詰められるのか・・・」というように心の苦しみへの正しい対処があることを連想することにつながり、その具体的な対策と相まって、やがて、追い詰められる人、自殺しようとする人は減っていくのだと思います。

ところが現在のように、自殺対策・自殺防止といった言葉を何度も繰り返していると、「心の苦しさの解決には自殺という手段がある」と暗示しているのと同じ意味を持ってしまうところがあるのです。

次に、そう考える理由を簡単に説明します。

苦しい気持ちに追い詰められてしまった人は、その解決策を渇望しています。

心の苦しさから抜け出したくてワラにもすがりたい心境です。

そんな時に、その心境に近い雰囲気を持つ解決方法が意識の中に飛び込んでくると、それを自分にとっての唯一の解決策だと思い込んでしまいやすいところがあるのです。

そのあたりの詳しい説明は、次のページを参考にして下さい。

  【参考】 罪と罰(5) 人はなぜ罪を犯すのか?

そして、メディアなどから「自殺」という言葉を繰り返し繰り返し聞かされていると、「苦しさに耐えられなくなった人は自殺するしかないんだ」と認識してしまい、それを解決策に執着してしまうと、そう行動しなければならない心理に追い込まれていってしまうのです。

(自殺に限らず、最近多発する様々な犯罪なども、出口の見えない苦しさの中で、誤った解決策に巡り合ってしまい、それに執着してしまうことによって起こるのだと考えています。)

しかし、真実は違います。

現実に直面している様々な事情によって心が苦しい状態に追い込まれていても、心の苦しさを解消する方法はあります

そして、心の苦しさの解消は、さまざまな事情の解決とは関係の無いところで実現できるのです。

その考え方については、次のブログで順を追って紹介していますのでご参照ください。  

 【参考】 カウンセラーじゅんさんのコンテンツ紹介ブログ

メディアが、そのような性質を持つ言葉を、無自覚に何度も繰り返し伝えることは、それらの流れを強化してしまうのです。

現在は、インターネットの普及に伴って、能動的な姿勢になれば、その具体的な手段を容易に知ることができる環境が整ってしまっています。

世の中からそういった類の情報を抹消する以外に、能動的に情報を探す人がそれにたどり着くことを食い止める方法はありませんが、受動的な人に、能動的な行動を起こすきっかけとなるような情報を知らせるのは極力避けるべきだと考えます。

次のような情報が自殺対策支援センターライフリンクのサイトに掲載されていますが、これも同様の考えによるのだと思います。

参考のため引用しておきます。

「自殺を予防する自殺事例報道のあり方について」のWHO勧告(2000年)

※昨年9月10日にライフリンクが主催した「『世界自殺予防デー』緊急フォーラム」配布資料から抜粋

1)やるべきこと

・自殺に代わる手段(alternative)を強調する。

・ヘルプラインや地域の支援機関を紹介する。

・自殺が未遂に終わった場合の身体的ダメージ(脳障害、麻痺等)について記述する。

2)避けるべきこと

・写真や遺書を公表しない。

・使用された自殺手段の詳細を報道しない。

・自殺の理由を単純化して報道しない。

・自殺の美化やセンセーショナルな報道を避ける。

・宗教的、文化的固定観念を用いて報道しない。

○日本における自殺報道の現状

・個々の自殺の手段を詳細に報じる傾向  

例:X-Japanヒデ氏の自殺報道、ネット自殺報道、練炭自殺についての報道

→新しい自殺手段が入手可能であることを大々的に宣伝してないか?

→模倣自殺(ウェルテル効果)

・自殺を考慮中の人が読者に多数いることを前提とした報道がなされていない。

→そのような人々をサポートするメッセージ等がセットで紹介されていない。

(例:相談機関連絡先)

《 中 略 》

※以上、反町吉秀氏(現・青森県東地方健康福祉こどもセンター保健部東地方保健所 保健医長)による

【自殺対策支援センターライフリンク 「いじめ自殺」報道のあり方:より引用】

少し話がそれますが、2008年は硫化水素を用いる方法で、1000人以上が命を絶ちました。

通常、死に結びつくような行為をする時は、もの凄い恐怖を感じるだろうと想像します。

普通、恐怖は、その行為を思いとどまらせるように働きます。

しかし、「硫化水素を発生させる」方法は、その行為が「薬品を混ぜる」という恐怖を生じさせ難いものだったので、多くの人が行為を遂行してしまったのだろうと想像しています。

結果、本当なら、生きるところに踏みとどまれたかもしれない多くの人まで、死に追いやってしまったのだと思います。

これは、「硫化水素自殺」という言葉を知ってしまったが故の悲劇だと思います。

そして、そんな言葉を、テレビや新聞やインターネットのWebサイトなど手段を用いて、ニュースとして大衆に知らせてしまったのがマスコミのしたことなのです。

また、一昨日だったと思うのですが、夕食時のテレビの報道番組で、「富士山樹海における自殺」の特集をしていました。

これは度々繰り返される企画です。今回の番組は、一応、自殺を食い止めようと頑張っておられる団体の活動の紹介で締め括られていましたが、これも、「富士山樹海で自殺する」という方法を世に知らしめているという意味合いを含んでしまっているのです。

詳細は省きますが、

  • 無差別殺人、猟奇殺人、人間関係のもつれなどによる殺人などの報道
  • 凶悪シーン・暴力シーンを含むサスペンスドラマ

といったものも、解決を求めて苦しんでいる人に、誤った解決方法を示し、彼らをその解決策に執着させてしまう恐れがあります。

ちょっと、話が広がり過ぎてしまいましたが、最後にまとめます。

【まとめ】

世の中に何らかの言葉を広めようとする場合、又は、広めてしまうような行為をしようとしている時は、これらのことを踏まえて、言葉の選択には細心の注意を払うことが大切だと考えます。

【心の苦しさを根本的に解決できる唯一の方法】

最後に繰り返しますが、心の苦しさを解決する方法は、次の2つです。

  • 誰かにつらい気持ちを話すこと
  • 誰かに見守られながら、スッキリするまで泣くこと

これは、催眠療法を繰り返し実施することによって辿り着いた結論です。

催眠療法など受けなくても、ただ、この2つをするだけで、催眠療法の後に得られるスッキリとした楽な気持ちを取り戻すことができるのです。

直面している問題の解決は、そのあとでもできるのです。

そして、心をスッキリさせてから考えれば、それまでは思いつかなかったような、もっと良い解決策も考え付くものなのです。

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