トラウマ(心的外傷)
説明
心的外傷 個人の精神生活に衝撃を与えるような出来事があり、それがあまりにも強烈であるために適切な対処が出来ず、無意識下に抑圧されて長期にわたる障害をもたらすような体験を言う。
一つだけの出来事で外傷となる場合と、いくつかの出来事が重なったために外傷となる場合とがある。
また、同じような出来事でもそれが外傷になるかどうかは個人側の条件にもよる。
例えば、葛藤が存在しそのために防衛機能が効果的に働かないなどの理由による。【カウンセリング辞典(誠信書房)、「心的外傷」より抜粋】
心的外傷 個人的に精神病理現象をひき起こすほどに強烈かつ刺激的、打撃的となった主観的体験のこと。
フロイトが当初想定していた「刺激防壁」に対して、それを突破するほどの強力な外部からの刺激を外傷性のものと呼んだことに由来する。
原光景(両親の性交渉場面)は心的外傷の代表とされるものである。【精神科ポケット辞典[新訂版](弘文堂)、「心的外傷」より抜粋】
もう一つの説明
『心的外傷』と聞くと、普通の怪我のようにその状態を客観的に把握することができないため、とんでもないことになってしまっているような印象を受けてしまうかもしれません。
しかし、『トラウマ』とは、そんな得体の知れないおどろおどろしいものではなく、簡単に説明すると、
と表現できます。
例えば、お父さんがニコニコして近づいて来ると「なんだか嬉しい気持ちになる」といったことも、逆の意味でトラウマと言えます。
つまり、『トラウマ』とは、
なのです。
『曖昧な予感』とは、次に起りそうな事態を具体的に想定しているわけではなく、
- 何となく良いことが起こりそう
- 何となく悪いことが起こりそう
という程度の認識です。
しかし、出来事に関する具体的なイメージはないものの、そういった事態に陥る可能性は、過去の経験の繰り返しによって、その本人の生きてきた環境と身に付いた行動の習慣においては、精度の高いところがあるものなのです。
この、
- 本人の生きてきた環境
- 身に付いた行動の習慣
においては、精度が高いというところが、そこから抜け出すためのポイントとなります。
予感を身に付けた要因を具体的に理解する
例えば、誰に対しても「自分の本当の気持ちを伝えると、相手を怒らせてしまうかもしれない」と感じて、なかなか自分の気持ちを表現できなかったりする場合、
- 『自分が本当の気持ちを言うと、相手は怒る』と感じている本当の相手は誰なのか?
と考えてみると良いでしょう。
実際に目の前にいる人である場合もありますが、『トラウマ』という言葉を意識しているときは、その対象となる人は、過去の人間関係の中にいた人の誰かである確率はとても高いです。
このように考えて、『トラウマの直接的な要因となっている人が誰なのか』ということに気付くだけでも、漠然と感じていた恐れの対象が限定することにつながります。
そして、その限定によって、過去と現在が分離され、過去の囚われから開放されるきっかけになります。
しかし、本当に大切なのは、「なぜ、それがトラウマになってしまったのか」ということを理解することです。
次に、そのことについて説明します。
トラウマの本当の原因
トラウマは、本人の「心が強い」とか「心が弱い」とかいうことが関係している、つまり、本人の責任だと思っている人は多いように感じています。
しかし、
と考えています。
そして、ほとんどの場合、本人は意識できていないのですが、そんな事情が今も本人の周りを、現実や予感として、取り巻いているのです。
一般的には、恐怖や嫌悪感を与える対象をトラウマとして問題視しがちですが、本当は、
- 『本人を取り巻く予感』を解消できなかった過去の事情
- 『本人を取り巻く予感』を解消できない現在の事情
という『事情』の問題なのです。
そんな事情が、過去から現在、そして、未来へと続いていると信じているから、
- それと関わったら、また、あのときと同じような気持ちになるだろう
- もし、あの時のような気持ちになってしまえば、一人孤独に耐えなければならないつらい日々に陥ってしまう
と考えてしまい、その事態を回避することばかりに意識が向いてしまうのです。
しかし、心の苦しさは、それに耐えようとしているうちは、なかなか解決しません。
- なぜ、心の苦しさへの対処は、耐えることだけだと信じているのか?
- なぜ、耐えれば、心の苦しさは解決すると信じているのか?
- なぜ、一人で耐えなければならなかったのか?
本人にとっては、それらはあまりにも当たり前になってしまっているので、そんな事情や、そこに隠されている『自分自身の本当の望み』を意識できなくなってしまっています。
自分の努力だけでは、意識しなくなってしまっていることには、なかなか気付くことができません。
いくら沢山の本を読んだり情報を集めたりしたとしても、自分が意識しているところの情報しか集まらないことがほとんどです。
やっぱり、それに気づくには、自分以外の誰かと話すことが一番の近道です。
しかも、生まれ育った環境の家族以外と話すことが望ましいと考えます。
(詳しい説明は、ここでは省略します。)
身近な話し相手を見つけて、いろいろな人との会話の中が、自分が普通のことと思っていたことを見直すきっかけを作ってくれます。
ただ、自分のことをじっくりと話したいときは、日常生活の中でそのような状況を作り難いこともあると思います。
そのような時には、心理カウンセリングや電話相談などを活用すると良いでしょう。
誰かに、自分の気持ちをじっくり話し、自分の『普通』を見直す中で、やがて、無意識の奥へと追いやっていた『本当の気持ち』を思い出すことにつながるのです。
本当の解決
実は、本当の望みは、
だったりします。
ですから、誰かに自分の気持ちを話そうと決意し、そして、それを誰かに話した時点で、
- 自分の力で自分の望みを実現することができている
と言えるのです。
そして、人に自分の気持ちを聴いてもらえば、安心な雰囲気の中で、苦しさをやり過ごすことにつながり、次第に、心は楽な状態へと変化していきます。
そんな繰り返しによって、苦しさを一人で耐えるという習慣は、人の温かさの中で苦しさをやり過ごそうとする習慣に変化し、トラウマを解決しようとしなくても、自然にトラウマなど意識しなくなっていくのです。
最後に、まとめを書いておきます。
【まとめ】
自分の気持ちを誰かに話そうと思った時点で、『本物の答え』にたどりついています。
もう、『それ以上の答え』を求める必要はありません。
あとは、気持ちを話す習慣を身につければ良いのです。
結果は、後から着いてくるはずです。
【参考】
話し方については、次のページを参考にしてください。