心を楽にするために振り返る子育て

コンプレックス

『原因と結果』ということを意識して『コンプレックス』について考えた時、「コンプレックスは原因で、その結果として悩みや心の苦しさが生じる」と理解することが多いように思います。

簡単に言い直すと、「コンプレックスがあるから悩んでしまう」と考えてしまいがちなところがあるということです。

一旦、コンプレックスと意識し始めてしまうと、それを解決しようとすると、逆に、コンプレックスを感じてしまいがちな場面で、それをより強く意識するようになってしまい、時には、それが恐怖の感覚につながってしまうことさえあります。

そして、努力しても解決しないという状態に陥ってしまって、どう対処したら良いのか分からなくなってしまうことも多いかもしれません。

そんな曲者のコンプレックスから解放される為に、少し違った視点からご説明したいと思います。

1.コンプレックスは『原因』ではなく『仮説』

コンプレックスを悩みや心の苦しさの原因ではなく、『悩みや心の苦しさがあるから、コンプレックスが出来てしまう』と仮定してみます。

もう少し詳しく説明すると、次のような状況になっていると考えてみるということになります。

1.まず、心が苦しいと感じている

2.その苦しさを解決する為に、その原因と思われることを探す

3.「この原因を解決すれば悩みは解決するだろう」という『仮説』を立てる

4.『仮説』を解決するように取り組む

このとき立てる『仮説』がコンプレックスの種になると考えています。

この仮説に取り組むことによって、比較的短期間でそれを実現でき、その結果すがすがしい自分を取り戻す事が出来れば、その仮説はコンプレックスになる事はありません。

しかし、仮説によって解決しないという経験を繰り返すうちに、それがコンプレックスという形で意識されるようになってしまいます。

2.コンプレックスを手放せない理由

仮説が誤っていて解決しないのなら、仮説を改めれば、解決できるかもしれません。

しかし、コンプレックスを感じていると、解決に結びつかない仮説をいつまでも手放せなくなってしまいます。

ここでは、そのような状態に陥ってしまう理由について、少し考えてみたいと思います。

一般的に、「原因が分かるから解決できる」、「原因が分からないと解決できない」と考えるのは普通のことのように思います。

もちろん、たいていのことに、この論理は適用できます。

そして、これを心に関わることにもあてはめようとするのも、ごく自然な思考だと思います。

ですから、そう考えると、心が苦しさを解決する為に、その原因がどうしても必要となってくるのです。

しかし、『心に関する大切なところ』を理解せずに、この原因探しをしても、思うように解決しない場合があります。

それは、もともと存在しない問題や原因を探し出そうとしてしまうことが多く、時には、自分の長所まで否定しなければならなくなってしまいます。

ですから、本人には、そんなつもりはなくても、自分自身をいじめてしまっているので、とても辛い気持ちに陥ってしまう事が多いのです。

そんな時に、「これを解決すれば心の苦しみから解放されるかもしれない」と思えることが見つかると、希望を持つことで心が救われるのです。

コンプレックスとは、やっとの思いで見つけた苦しみの理由です。

もし、それが解決してしまうと、苦しさの理由がなくなってしまい、再び問題のないところに問題を見つけ出そうとするようなあの苦しい状態に戻らなければならなくなります。

本人はそれを無意識に避けようとしてしまう気持ちはとても理解できると思います。

このようなことから、コンプレックスには『解決されてはならない』という使命があり、コンプレックスから解放されるのが難しいのは、コンプレックス自体が持つこの使命の為だと考えることもできるのです。

3.コンプレックスの正体

ここまでの説明は仮説に過ぎませんが、このように考えてみると、コンプレックスを解決する為には、意識の方向を、今までとは違う方向、つまり、もともと感じていた心の苦しみの方に変更してみることも大切かもしれないと思えてくると思います。

その為に、ちょっと、次の問いを考えてみて下さい。

1.コンプレックスを感じる場面は、どのような場面ですか?

2.その場面では、どのような感情や感覚を感じることが多いですか?

コンプレックスに意識が向いているときは、実は、このときの自分自身に生じる『感情』や『感覚』を苦手だと感じていることが多いと考えています。

そして、コンプレックスを強く意識している時の行動のほとんどは、

■苦手な感情を感じないようにしようと努力している

■苦手な感情や感覚が生じそうな場面を避けようとしている

というもので、心理的には、自分の苦手な感情や感覚とどう向き合ったら良いのかがわからずに困っている理解できるのではないかと考えています。

4.自分の感情や感覚との正しい向き合い方

現代の日本においては、特にネガティブな感情を、否定してしまいがちな傾向が強まってきているように感じています。

しかし、実は、自分に生じる全ての感覚や感情は、自分にとって全く正しいものなのです。

この辺の詳しい説明は、今回は省略しますが、大きく次のように理解してみて下さい。

・自分の嬉しい、心地良いなどの感情や感覚は、大切にされるべきものです。

・自分の苦しい、悲しいなどの感情や感覚は、癒されるべきものです。

コンプレックスを強く感じてしまっている場合、自分にとってのネガティブな感情や感覚を癒すことに慣れていないと理解できると考えています。

それは、自分の問題というよりは、そうせざるを得なかったという過去の経験の歴史、努力の歴史があることがほとんどだと、多くの方々のカウンセリングを通して感じています。

【例】

  • テストで悪い点数を取って、とっても辛く感じて、それでも、やっとの思いで親に報告しているのに、親からバカにされもっと辛くなった
  • おもちゃを買ってもらえない辛さを我慢しようと泣いているのに、「わがままを言って泣くな!」と怒られ、もっと辛くなった

このような経験の頻度が高くなると、

  • 辛く感じるのは、自分が悪いからだ
  • 自分が辛い時は誰も助けてくれないから、一人で頑張るしかない

というような錯覚に陥ってしまう可能性も高くなってしまうと考えています。

ネガティブな感情や感覚を感じた時に、それらは癒されることがないと感じてしまうと、自分の中にそれらの感情が生じることは恐怖だと思います。

しかし、もし、それが生じても、それを癒すことが出来るということを知り、その方法を身に付ける事が出来れば、それは、もう恐怖ではなくなるだろうと思います。

最後にもう一度繰り返します。

  • 自分の嬉しい、心地良いなどの感情や感覚は、大切にされるべきものです。
  • 自分の苦しい、悲しいなどの感情や感覚は、癒されるべきものです。

その為の第一歩は、自分自身が、自分に生じる全ての感情や感覚の良き理解者になろうとするところから始まるのではないかと思います。

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