心を楽にするために振り返る子育て

自信

『自信がある』『自信がない』という言葉は、私たちは当たり前のように使っていると思いますが、それが一体何なのかということは、ほとんど把握できていないのではないかと感じています。

ここでは、そんな『自信』という言葉について、ちょっと、詳しく考えてみます。

1.一般的に使う『自信』の意味

【例】 何かみんなの前で発表することになったとします。 それは、自分が得意とする内容の発表です。 資料を揃え、発表の準備も整いました。 でも、何となく自信がありません。

こんな時、どうするでしょう?

たぶん、資料をチェックしたり、想定問答を考えたりするなど、心配な点を具体的に洗い出して、それを解決する事で、自信をもって発表に望むことができるという流れになるだろうと思います。

つまり、『自信』は何らかの具体的な対処をすれば、割り合い直ぐに手に入れることができるものなのです。

2.悩んでいるときに使う『自信』の意味

しかし、悩んでいるときに使う『自信』は少しニュアンスが違います。

どんなに不安なポイントを洗い出して対処したとしても、『自信がない』と表現している感覚が消えることなく残ってしまうことが多いのです。

人は、『ない』と認識することによって、その逆の『ある』という状態があたかも存在しているように思ってしまうところがあります。

『自信』はそういった類の言葉です。

そして、この『自信が無い』という言葉の裏返しとしての『自信がある』という状態が、あたかも存在しているかのように錯覚してしまっているというのが、悩んでいるときに使う『自信』の意味だと考えています。

ですから、『自信』があるとかないとかいうややこしい話ではなく、ただ、不安なだけなのです。

3.不安に対する反応

この何をしても消えない不安な感覚に対して、アクティブに反応すれば『完璧主義』的な行動をとるようになり、逆に、ネガティブに反応すれば、臆病になり自分らしく振る舞うことが難しくなったりするのです。

一見、両極端な行動パターンなのですが、この両者が反応しているのは、同じものなのです。

ですから、その本質を見極めるためには、反応の仕方に意識を向けるのではなく、何に反応しているのかという方に注目する事が大切だと考えています。

本人は、完璧主義を貫きたいわけでもなく、また、臆病者なわけでもなく、ただ、不安な気持ちから解放され、安心な気持ちになりたいだけなのです。

そして、その具体的な方法が分からなくて、困ってしまっているのです。

或いは、その最善策だと信じて現在採用中の方法がうまくいかなくて困っているのです。

4.【補足】『ない』とか『ある』とかいうこと

『自信』以外にも、『ある』とか『ない』とかいう思考に陥り易い言葉は色々あります。

『友達』や『幸せ』という言葉を例に、もう少し説明しておきます。

【 友 達 】

『友達』という関係があると思と、自分に『友達』がいるかどうかが気になってしまうところがあります。

たぶん、『友達』という言葉を意識している時は、「人と、こういう関わりをしたい」という願いがあるのに、それがうまくいかなくて困っていることが多いのです。

そして、「友達になれたら、きっとそれがうまくできるだろう」という仮説立てて、その仮説を信じているのです。

でも、『友達』が契約によって成立するわけではないので、いくら考えても、或いは、相手に確認したとしても、自分と相手が『友達』という関係であることを立証することはできません。

仮に何らかの契約によって、それを成立させることはできるかもしれませんが、本当に求めていることはそんなことではないので、次第に虚しさのようなものを感じるようになり、再び、もともと感じていただろう「本当の『友達』が欲しい」というような思いに引き戻されてしまうのがオチなのです。

ですから、『友達かどうか』というこだわりから意識を外して、「自分は誰とどのような関わりをしたいのか」ということを具体的に考えることが大切です。

そして、その為の行動を起こせたとき、本当に手に入れたかったものを手に入れることができるのです。

そんなコミュニケーションを取り合える関係になれたとき、自分自身が相手のことを『友達』と認めることができるのです。

【 幸 せ 】

『幸せ』というものがあると思と、今の自分は幸せかどうかが気になってしまいます。

しかし、『幸せ』という具体的なものは存在しませんから、それを客観的に証明することはできません。

漠然と『幸せ』というものを意識すると、良い出来事や良い環境など、何か良いことだけに囲まれた人生が『ある』ように思えてしまいます。

しかし、良い出来事も悪い出来事も、恐らく全ての人に等しく訪れるものなので、悪い出来事を避け続けることなど出来ません。

仮に、しばらくの間は運良く悪い出来事を避け続けることが出来てたとしても、いずれ、必ず、悪い出来事に遭遇するときがやってきます。

そんな時、『幸せ』ということを意識していると、「私は、ついてない」とか「今の私は、何て不幸なんだろう」とか「幸せになりたい」などと考えてしまいます。

しかし、『幸せ』という言葉を捨てて、『満たされる』ということを意識するようにすると、理解は随分変わってきます。

出来事や状況の良し悪しには左右されなくなるのです。 悪い出来事に遭遇してつらくなっても、誰かに優しくされれば心は満たされるのです。

良い出来事が起こったときは、他人とその喜びを共有してもらえると、やはり、心は満たされるのです。

逆に、良い出来事が起こっても、誰かと喜びを分かち合うことが出来なければ、何か物足りなさのようなものを感じるだろうと思います。

まとめると、『幸せ』を意識すると、出来事やものごとの良し悪しばかりに気を取られてしまい、目の前にある優しさに気付けなくなってしまって、せっかくの満たされるチャンスを逃してしまいがちになったり、満たしてもらっていることに気付けなくなってしまうということです。

次の言葉を、いつでも言えるよう気持ちの準備をし、アンテナを張っていると、きっと、自分の心をいつも満たしていくことにつながります。

  • 私がつらいときに、優しくしてくれてありがとう
  • 私の嬉しいこと、一緒に喜んでくれてありがとう

そして、それによって得た『心が満たされている状態』のことを、『幸せ』と表現することはできるのだと思います。

説明は省略しますが、『悩み』という言葉も、こういった類の言葉の一つです。

これらの例のように考えると、『ある』とか『ない』とかいうところから離れ、具体的に自分の気持ちを考えようとすると、実体のないものの存在を証明しようとするような哲学的思考にはまり込まずにすむので、そんなに苦しい気持ちにならなくても済みます。

5.『自信』とは

最後に結論を書いておきます。 『自信がある』という感覚は、次のようなとき持つことができると思います。

  • 「苦しい気持ちになっても、また、安心な気持ちになることができる」ということを知っている
  • その為の具体的な方法を知っている
  • 知っているその方法を確実に実践することができる

ですから、心が苦しいと感じるときほど、一人っきりになるべきではないということを知っておいて下さい。

苦しい気持ちになったとき、そんな気持ちを受けとめてもらいたい人に話して、優しくしてもらう(じっくりと聴いてもらう)勇気を持って下さい。

そして、優しくしてもらった実績が、きっと次の自信につながるのです。

優しくしてくれる人は、自分が思っている以上に、自分の周りにたくさんいるものです。

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